収容人数1万3千人。代々木第一体育館。
1964年の東京オリンピックに備えて作られたこの会場で
またひとつのドラマが生まれようとしていた。

「こんこん!こんこーん!」

あちらこちらから響き渡る叫び声。
みんなで持ち寄ったピンクサイリウム。
悲しみのセレモニー。声を詰まらせながらも読みきった手紙。
走馬灯のように頭を駆け巡る楽しかった思い出。
共に号泣した外国人。


それは、夜公演がスタートした時だった。

「おい、ちょっと見てみろよ。」

横に座っていた男が隣の人の肩を叩きステージを指差した。
肩を叩かれた人は意味も分からず男の指差す先を見た。
その先ににいたのはモーニング娘。のメンバー道重さゆみだった。
え?なに?どうした?と聞いても何も答えようとしない。
ただ不敵な笑みを浮かべるだけ。一見すると意味不明。
しかし、サングラスの奥でぎらつく彼の目ははっきりと語っていた。


「どうだ、あれが俺の女だ。かわいいだろう?」




これは、こんこん卒業コンの裏で繰りひろげられた、あるテロリストのドラマである。









ダン・・・ダンダンダン・・・ダンダンダン・・・ダンダンダン・・・ダンダンダン・・・・














風の中のすーばるー


砂のなか(ry







平成18年7月23日、夜。
べ〜やんは代々木体育館で2人の先輩たちと連番していた。
1人は昼でも連番してたでんでん。
そしてもう1人はサルバドーレことピストル氏。

ピストルにはサユカイダ代表というもう一つの顔があった。


「いやいや!今日はこんこんの卒業式やし何もやらんよ!」


開演前笑いながらそう語っていたピストル氏。
しかし前科が幾つもあるこの男には疑いの目が向けられた。


べ〜やんは思った。


サユカイダと言えばボードやアイテムを使い
リアクションとコミュニケーションを楽しむ集団。
しかし、今日のピストルは手ぶら、空手ではないか。

「ありえんよ、今日の(サユカイダ)テロ活動は。」

べ〜やんは小さな声でつぶやいた。


しかし、少しだけ生サユカイダを見てみたいという気持ちもべ〜やんにはあった。
ただ・・・今のピストルの眼、あれはまさに奇人の・・・
もしかしたら少しどころじゃ済まないかもしれない。
ヘタしたらリアルに退場者が出るかもしれない。
そんなことされたらこんこん卒業式がメチャクチャにされる。
サユカイダ九州支部長のべ〜やんの心境は複雑だった。
しかし、べ〜やんは心を鬼にした。


「そんなサユカイダ、俺が退治してやる。」


べ〜やんは、つぶやいた。




心配をよそに演目は進んでいく。
テロ行為も無くすべて無事に進むように思えた。
しかし、思わぬ展開が待ち受けていた。



05.初めてのハッピーバースディ!(新垣、亀井)


べ〜やんは目を疑った。
ファミリー席のはずなのにでんでんが空中に浮いているのである。
まさに座ったままの姿勢でジャンプだ。
でんでんのことをそうさせているであろうメンバーが席の近くに来た。

「えーりりん!!ハイ!!えーりりん!!ハイ!!」

先ほどよりさらに高く浮いているでんでん。
その様子を見て亀井が笑いながらでんでんに手を振った。
照れるでんでん。こんこんが出てきたら泣き、
えりりんが出てきたら照れる。まったく不思議な人だ。
まさかのエリカイダ登場にべ〜やんは意表を突かれた。






〜前回・前々回のレポで書いている中盤の内容は省略します〜








ついに最後の時。
ステージをグルグルとまわり、客席に手を振るメンバーたち。
ここまで静かにステージを見ていたサルバドーレことピストル氏。

「ピストルさん、疑ってごめんなさい。」

べ〜やんは普通に悪いなという気持ちになった。



その時だった!!

席の前にきた道重にピストルは大きく身を乗り出し、一言だけ大きく叫んだ。








さゆ!!


大きな声に驚いたような表情をする道重。
構わずピストルは両手でピースを作り頭の上に持っていく例のポーズを取った。
・・・うさちゃんピースだ。




そして道重は・・・











うさちゃんピース返し。
ピストルにとってはサユカイダ至福の味わいの時である。
そんな目の前で繰り広げられるリアクション&コミュニケーションに
べ〜やんは驚き、でんでんは吹いた。


「これが・・・サユカイダ!!」


たったの一回の勝負で完璧なまでにさゆの反応を貰ってみせたピストル氏。
彼にとってボードなどのアイテムはもはや必要なかった。
しかもあれは道重がうさちゃんピースをしたのでは無く、
ピストルが無理矢理道重にうさちゃんピースをさせたようにも見えた。

「恐ろしい・・・。」

ただただ怯えるべ〜やん。
べ〜やんは至福の時を迎えたピストルの顔を見た。
そしてピストルと目が合った。
ピストルは得意げに一度だけ頷いた。


「見たかね?反応というのはこうやって貰うものなのだよ。分かったかねぼうや?」


べ〜やんはピストルの心の声を聞いた。


メンバーに振り向いて欲しいなら全身全霊で気を込めること。
開演前こう語っていたピストル氏は自ら実践してくれた。
べ〜やんはピストルを手本にやってみた。

「こんこぉぉぉおん!!ありがとぉおお!!」

涙声で叫び手を振るとこんこんはべ〜やんに手を振り返した。
べ〜やんは最後の最後で初めてこんこんから反応的なものをもらったのだった。

ありがとうサユカイダ。ありがとうサルバドーレ。