二年越しのリクエスト   


「ファンの集い」

この言葉を聞くと今でもあのことを思い出す。
私はこの名前のイベントでとてもやりきれない思いをしたことが過去にあった。


大阪ね〜え事件(2004年10月11日)


松浦亜弥ファンの集いin大阪(1回目)
前日・前々日と大阪でコンサート。
そしてその次の日にまたまた大阪で開催というこのイベント。
「大阪3Days全制覇!我々こそが亜弥ヲタ!あやや親衛隊なり!」
そんな声すら聞こえてきそうなこの会場には多くの松浦亜弥のファンたちで埋め尽くされた。

イベントも中盤というところで私たちに質問が投げかけられた。

質問の内容を簡単に説明するとステージ上のモニターに
松浦亜弥の持ち歌が5つ映し出される、そしてそれに対して
1曲づつ指差して曲ごとに客席の拍手の大きさを機械で測定、
その数値が客席のリクエスト数ということでカウントされ、
その結果によってこの5曲のうち上位2曲を披露するというもの。

モニターに映し出された曲はどれもレアな曲ばかり。
ファンの投票では1位にありながらも長く披露されてなかった「ナビが壊れた王子様」を筆頭に
今まで一度も披露されたことの無かったカップリング曲「逢いたくて」や何年も披露されていない
ファーストアルバムの名曲「そう言えば」などその5曲はどれもレア中のレア曲だった。
ただ・・・ある1曲を除いて。

私は聴きたかった。
ファーストアルバムの名曲「そう言えば」を。

理由は簡単だった。
松浦亜弥がこの曲に特別思い入れがあることも知っていたし、
何より私自身この曲が大好きだった。

この5曲ならおそらくナビと逢いたくてとそう言えばの三つ巴になるだろう。
考えたくは無いが最悪「そう言えば」が3位だったとしても初聴きの逢いたくてとナビ。
どちらにしてもレア曲だったので私の心は踊った。


しかし・・・予想だにしない結果が待ち受けていた。


1位は「ナビが壊れた王子様」
そして2位は・・・なんと「ね〜え?」であった。

「ね〜え?」はいい曲だ。
ただ、このファンクラブ会員限定のイベントでは一番ナシのはず。

何故だ!?お前ら今の彼女が歌う「そう言えば」や初披露の曲は聞きたくないのか!?

私は悔しかった。
こういうシステムを取るということはどの曲が選ばれても歌えるように準備していたということ。
イコールそれは今回ファンの人たちだけに特別に普段歌わない曲を披露したかったということだ。
きっと彼女も楽しみにしていたはずだ。

それを歌わせないとは・・・お前ら何様のつもりだ?

彼女やスタッフもまさか「ね〜え?」が選ばれることなど予想していなかっただろう。
「この曲はまだ人前で披露したことないんですよ。」
2回目以降彼女はこう釘をさした後に集計したという。
後でその話を知ったとき、私は胸が張り裂けるような気持ちになった。
そして本人にそこまで言わさせた松浦亜弥のファンを名乗る者達を憎んだ。
さらにはこの件について触れている亜弥ヲタが
ネット上で(自分の周りに)居なかったことにも強い憤りを感じた。



あの日以来、私は亜弥ヲタを信じなくなった。
何故なら亜弥ヲタは裏切るから。
亜弥ヲタと名乗る者には常に疑いの目で見てるし
意識的に亜弥ヲタとコンタクトを取らないようにしていた。

亜弥ヲタの知り合いがほとんどいないのはこの事件があったから。
断言できる。はっきり言って他メンバーのヲタの方がよっぽど信用出来る。
亜弥ヲタであややのことを話すことが出来る人は知り合いでも片手で収まるくらいしかいない。
あれ以来ファンサイトも見なくなったしあやや系テキサイで見てるのは知り合いのサイト、
そして会ったことがない亜弥ヲタでは唯一リスペクトしているココだけ。


それほどこの事件は私の胸に大きな傷をつけた。

今でも後悔している。

あの時、拍手だけでなく叫んででも阻止すればよかったと・・・。







あれから約2年。
この日再び松浦亜弥ファンの集いが開かれることになった。
私は幸いにも抽選に当選し、
図らずも大阪のイベントに参加することが出来た。
何の因果かまたもや1回目。(東京の回があるので初回では無い)

このイベントで私は彼女にどうして伝えたいことがあった・・・。




イベントの中盤。
映画のPRも終わり、歌のコーナーへ。
今回のセットリストはあらかじめ決められたもの。
どの曲もあの時とはまた違った聴かせ方で私たちを魅了してくれた。

私のすごい方法
ダイアリー
恋してごめんね
初恋(アコースティック)

ちなみに今回のセットリスト、
本人が歌いたい曲をチョイスし、準備して披露したとのこと。
もう二度とあのような事故が起こってはいけない。
今回の流れはそう考えてのことなのだろう。

続いてファンに対してのお礼を言う松浦さん。
「自分と一緒にファンの人たちもいい年の重ね方をしていっていることは素晴らしい。」
春のツアーでも何回も口にしたこの言葉。
若返り大作戦と題して髪をバッサリ切り可愛らしいスタイルの松浦さんであったが
この日の彼女の話はお坊さんの説法並みに深かった。



少々の休憩を挟み、握手会へ。
超がつくほどの高速握手で次々とヲタが処理されていく。
秒数に換算して約1秒か2秒といったところか。

私は2階席だったので自分の番までかなり心の準備をする時間があった。
でも逆にそれが良くなかった。
ステージで次々と握手をしていく光景を見て落ち着くどころか逆にどんどん緊張が高まった。
ドクン、ドクンと自分の心臓の音が周りに聞こえているんじゃないかと思うくらい緊張した。

ではそろそろ順番ですので立ち上がって下さい。

係員の誘導で松浦さんの待つステージへと向かう。
私はまるで漫画のようにガチガチに緊張していた。
一階に降り、廊下のようなところに順番に並ばされる。

トクトクトクトクトクトクトク・・・・・・

どんどんと脈拍があがるのが自分でも分かる。
廊下の先にある扉をくぐるともうステージのすぐそばだった。
列に並ばされ、何も考えられず前の人と同じ方向に歩く。
多分、ステージにあがる階段をのぼったと思う。

ハイ詰めて○○○○!○○○○○下さい!

係員が何か言っていたが全然耳に入らない。
あとちょっと呼吸がおかしくなってきた。
気がつくとあと3メートル先に松浦さんの顔が。
おそらくあと何秒後かには彼女が目の前に・・・!!

ヤバイヤバイヤバイヤバイ・・・・!!!!

そしてついに目の前に松浦さん。
20になったばかりだというのに彼女はどこかノスタルジックな雰囲気を醸しだしていた。
私は勇気を振り絞って彼女に初めから決めていたあの言葉を伝えた。



 次は・・・「そう言えば」を歌ってください!


さっきまでニコニコと笑っていた松浦さんの表情が真顔になる。
私は一瞬何が起こったのか分からず混乱した。
彼女は少し体制を低くし、力強く真っ直ぐな目で私を見つめた。
松浦さんのレーザービームのような目力に自分でも体がガッチガチに固まってるのが分かる。
そして彼女は少し低い声で力強くひと言だけはっきりと返事をしてくれた。




  わかった・・・!








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この日大阪は軽く30℃を超え、まさに夏本番といったところ。
暑い・・・。外にいる人たちは皆一様に暑さに耐えていた。
私は汗を拭くようにタオルで顔を拭い、暑さから逃れるようにその場所から離れた。
そしてごく親しい人とそばを食べ談笑し、家へと帰った。

やっと出来た二年越しのリクエスト。
松浦さん、いつになるかは分かりません。
もしかしたらその日は来ないかもしれません。
でもいつか、今のあなたが歌う「そう言えば」が聞ける日を楽しみに待っています。